全てを失った二人の物語
一か所に結んだ髪に、赤いバンダナ、
隈のある目、髭の生えた口元。
格好は…こちらもなかなか酷い。
全体的に薄汚れて、まり は彼を可哀そうな目で見た。
何物かはわからないが、決定的なのは"男"だと言うこと。
男は両手をあげて、「降参」のようなポーズをしている。
その指がひらひらと動いている。
「まぁ〜待て待て、そんな怪しそうな目でオレを見るな、な?
見た目はこんな格好だが、オレはいい奴だ」
"な?"そう目で訴えかけてくる男。
その言葉を、まり は毛頭信じる気はなかった。
怯えながらも護身様に、と持っていたナイフを構える。
「アナタ誰!!?だっ!!!?」
「落ち着け、落ち着けって!
そんなもん構えてると、男は走って逃げちまうぞ!
…それから、俺が誰かという質問」
男は、胸を張った。
「オレの名前は、シリウス・フリーダム!
誇り高きブリティッシュ・マフィアだ、お分かり?」
男は……シリウスは、まりの驚く反応を今か今かと待っている。
まりはナイフを手から取りこぼした。
「…………ま……」
シリウスが、よく聞こえるように近寄る。
「…ま?」
「マフィアーーー!!!!?」