蜜愛シンドローム ~ After Party ~
『お題その1 : 罠について』
「罠、か・・・」
ふむ、と雅人が腕を組む。
その落ち着いた様子は、職場で見るものと何ら変わらない。
「罠と言うからには、多かれ少なかれ自己の願望を果たしたいという側面を持つ。問題は罠を張った目的と、そのやり方だ」
雅人は淡々という。
絢乃はそれぞれの『罠』を思い出した。
───今更ながら背筋が寒くなってくるのは気のせいだろうか。
「少なくとも、俺の罠では絢乃は驚きこそすれ、不幸にはなっていない。そこが加納との違いだろうな」
淡々とした口調だが、言っている内容は明らかに喧嘩を売っている。
卓海はクスリと笑い、口を開いた。
「・・・ま、強引だったのは認めますがね。でもああしなければ、ますます泥沼になってましたよ?」
と言った卓海の前で。
慧は唇の端に笑みを浮かべ、日本酒のグラスを傾けた。
「おれとしては泥沼になってそのまま自然消滅してくれた方が良かったんだけどな~」
「・・・おい、お前も喧嘩売ってんのか?」
「当たり前でしょ。言っとくけど、北條さんの場合はともかく、お前の場合はおれ諦めてないからね。アヤをあんな目に遭わせたお前を認めるなんて、一生ありえないよ?」