蜜愛シンドローム ~ After Party ~
慧はにこにこ笑いながら絢乃の方へと歩み寄ってくる。
・・・しかし。
雅人と卓海は、何か理解できぬものでも見るような目で慧を見つめている。
まるで地球外生命体でも見るような、その眼差し。
しかし慧は二人は眼中にない様子で、絢乃に話しかける。
「アヤ、今朝、髪飾り忘れて行ったでしょ?」
「・・・え、あの、その・・・」
「やっぱアヤの髪にはこれじゃないとね~。つけてあげるよ?」
慧は胸ポケットから銀のバレッタを取り出した。
そのまま絢乃の髪に手を伸ばしてバレッタを付けようとする。
そこでようやく、雅人と卓海がはっと我に返った。
「ちょっと待て! このシスコン野郎!!」
「・・・慧君、君のその行為にはいろいろと問題があると思うのだが?」
二人は絢乃を庇うように慧と絢乃の間に割って入った。
慧は驚いたように二人を見た後、目を細めてうっすらと笑う。
───ちなみに、道徳とか倫理という言葉は慧の頭の中からとっくに消滅している。
ひっと息を飲む絢乃の視線の先で、慧はくすりと笑って言った。