青空にさよなら
「川原さんが学校に来なくなったのも、それが原因だったのね……」
あたしは、黙って首を縦に振った。
まだ先生になって若い先生。
自分が受け持っているクラスでいじめが起きているとわかって、きっとショックを受けているんだろう。
だからあたしは、結局ずっと、不登校になった理由を先生に言えないでいた。
「でも、あたしなんかよりも、美空のほうがずっとつらかったと思う」
「そんなっ!私はもう慣れちゃってるっていうか……」
あたしが言うと、隣の美空が慌てて両手と首を横に振る。
そんなあたし達のやりとりを見て、澤田先生はすごく悲しそうに眉を下げて頭を抱えた。
「ごめんなさいね……。あなたたちがずっとつらい思いをしてたのに、全然気づいてあげられなくて……」
涙目になる先生。
「教師失格だわ……」
先生……。
碧のあの言葉が、頭の中によみがえる。
“蒼唯、君はひとりじゃないから”
あたしが学校に行ってなかった間、毎日あたしの家まで来てくれた澤田先生。
あたし達生徒のことを、先生はここまで真剣に考えてくれていたんだ。
「先生、顔上げてよ」
あたしが明るい声で言うと、先生はゆっくりと顔を上げ、丸い目を向けてきた。