青空にさよなら
あたしは、そんな先生に、碧さながらの笑顔を浮かべて、碧さながらの穏やかな口調で言った。
「先生。あたしは、先生が毎日家まで来てくれてたおかげで、もう一度学校に行こうって思えるようになったんですよ」
もちろん美空のおかげでもあるけど、と付け加えて隣の美空に視線を移す。美空は、少し照れくさそうに笑った。
それを見てから、もう一度先生に視線を戻す。
きっと、碧ならこう言うんだろうな。
あたしも……同じ気持ちだよ、先生。
「だからね先生。先生は、教師失格なんかじゃないよ。生徒思いなすごく素敵な先生だよ」
始めは確かに、先生に対して嫌な印象しか持っていなかった。
でもね、自分の事だけじゃなく、周りにも目が向けられるようになったら、先生の一生懸命なところに気づけたんだ。
「川原さん……!」
「私もそう思ってます。だから、教師失格なんて悲しいこと言わないでください」
美空も、あたしと同じように笑顔でそう言うと、先生は顔を歪ませて顔を両手で覆う。
「やめてよ二人共〜!先生泣いちゃうじゃない〜!」
というか、すでに泣いてしまっている先生。
くしゃくしゃな顔は、いつもの綺麗な姿とは違ってブサイクだった。
「先生、いつでもあなたたちの力になるから、何かあったら言ってね。できる限りのことはするから、ね」
鼻をティッシュでかみながら何度も念を押す先生に、あたしと美空は「ありがと、先生」と返した。
……涙と鼻水でぐちゃぐちゃな先生は、素敵な教師の姿をしていた。