青空にさよなら
あたしに名前を呼ばれた清水さんは、たちまち耳まで真っ赤になり、今にも泣き出しそうに顔を歪ませる。
そして、床に落とした自分のバッグを拾い上げると、来た道を引き返し、バタバタと走り去って行った。
「……」
バツが悪そうな顔で、取り巻きたちがお互いに顔を見合わせる。
クラスのみんなも、どうしたらいいのか、何を言えばいいのかわからないといった様子で、誰も口を開こうとしない。
ちょうどその時、HR開始を知らせるチャイムが鳴り響き、清水さんは欠席ということで1日の授業が始まった。
あたしはもちろん授業に身など入らず、一日中清水さんのことを考えていた。
“清水に言われて仕方なく……”
“友達とかそういうんじゃなかったから”
清水さんは、散々あたしや美空をいじめてきた人。同情する余地なんてないと思うのが本音。
でも、友達だと思っていた人にあんなことを言われたら……。
あたしは、無意識に、美空に水をかけられた時のことを思い出していた。
「……結構、つらいんじゃないかなぁ」
黒板をぼんやりと眺めて、ぽつりとつぶやく。
碧が助けてあげなきゃと言った意味がようやくわかった。
わかったけど……。
あたしは迷っていた。