青空にさよなら




「さてと、蒼唯。その格好じゃ風邪ひいちゃうよ」


お互い自己紹介を終えたところで、碧があたしのびしょ濡れになった制服を指さして言った。


「あ……」


嫌な出来事が頭によみがえる。
美空のことは一生忘れられそうにない。


「……いいよ、別に」


「良くないよ。お母さん心配するよ」


確かにそうだけど、こんな格好で家に帰る時点で心配をかけることにはなる。


あたしなら大丈夫だって、いつも勇気づけてくれてたのに、それに応えられなかった。


合わせる顔がない。
お母さんは、あたしの味方で居てくれるとわかっているからこそ。


応えられなかったうえに、最終的に逃げてきてしまったんだもん。


「碧、あたしね、あたしをいじめた奴らに仕返ししてやろうと思って死のうとしたの。強くなりたいと思って今までまっとうに生きてきたはずなのに、大事なところで逃げたくなった」


「ダメな奴だね、あたし」と自嘲気味につぶやく。


何でほとんど初対面の人にこんな話をしてるんだろう。碧はあたしに何があったかも知らないのに。


でも、たれ目をさらに下げて優しく笑ってあたしの言葉を待ってくれるから。


自然と本音がこぼれた。



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