青空にさよなら





『なまいきなんだよ!かっこつけやがって!』


なに……これ……?


気がつくと、あたしの目の前に見たことのない風景が広がっていた。


あたしの町よりは少しのどかで、車の通りも少ない。


『何が“女の子をいじめるな”だよ!俺たちが何しようと勝手だろー!』


そんな温かな風景とは不似合いの怒声が聞こえてくる。


声のした方を振り返ると、そこには黒いランドセルを背負った、たぶん小学6年生ぐらいの男の子が数人いた。


あまり、楽しそうには見えないな……。


あたしが思った通りで、取り囲まれて真ん中にいた男の子が、頭を抱えて泣きそうな声を出していた。


『やめてよ……!痛いってば……』


髪の毛を引っ張られ、ランドセル越しに背中を蹴られ、目に涙を溜めながら必死で耐え忍ぶ男の子。


『ぎゃははは!“やめてよ”だってさ!』


『女みてーな声出してるよ。さすが“みどり”ちゃんだな!』


“みどり”……!


その名前にハッとする。


いつか、川沿いの道でいじめられている男の子をあたしが助けた時に、自分もいじめられていたことがあると話してくれた碧を思い出した。


もしかして、あの男の子が“碧”なら、あたしが今見ているこの場面は、碧の昔の記憶……?



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