青空にさよなら
第7章
好きとさよなら
「……思い出した?」
幽霊の碧が、うずくまっているあたしに声をかけてきた。
あたしがさっきまで見ていたのは“碧の記憶”だから、碧が亡くなってしまったところで現実世界に戻されてきたらしい。
それでも、そのあとのことまで全部思い出した。
あのあと、大人の男の人にあたしだけ助けられたものの、碧だけ助からなかったというショックで、そのまま意識を失い、3日間眠り続けた。
目覚めた時には、あたしは事故前後の記憶だけでなく、碧との思い出全部、ぽっかりと忘れていた。
『当時、連日降り続いた雨の影響で川は増水しており、男の子は捨て犬を助けようとしたところを溺れてしまい、亡くなってしまったとのことです。なお……男の子を助けようとして同じく溺れてしまった女の子は、意識不明の重体でしたが、先日目を覚ましたとのことです』
あの夢で聞いたニュース。どこかで耳慣れたものだと思っていたら、目を覚ましたあと、病室にあったテレビから流れていたものだった。
それを、自分のことだとは1ミリも気付かず、当時のあたしはぼんやりと聞いていたのだ。
それから、記憶が戻るどころか、記憶を失っているということさえ忘れて、4年間を過ごしてきた。
まるで、悲しい出来事から逃げるように。
碧を失ったショックというのは、あたしにとって、それほど大きな傷をつくるほどのダメージだったんだ。