青空にさよなら
「蒼唯(あおい)ー!あおちゃーん!」
お母さんの声が、布団を頭までかぶっているのに聞こえる。
“あおちゃん”
小さい頃のお気に入りのあだ名で呼ばれたところで、絶対に返事なんかしてやらない。
「蒼唯、起きなさい。朝だよ」
とうとうお母さんはあたしの部屋まで来て、ノックもせずに入ってきた。
「蒼唯……」
「嫌。あんなクソみたいな学校行きたくない」
体を揺すってあたしを起こそうとしてくるお母さん。
あたしは負けじと掛け布団を握り締めて答えた。
「女の子がクソなんて言わないの!」
たぶん、今お母さんは腰に手を当てて「もうっ」とかつぶやいてる。
見なくてもわかるけど、わかったところで絶対に起きないんだから。
「あおちゃん、早く起きないと学校遅刻するよ?」
「だーかーらー、学校なんて行かないって言ってるでしょ」
あまりにもお母さんがしつこくて、あたしは布団をガバッと取って顔を出す。
「あたし、もう二度と学校なんて行かないから!」
思いきりお母さんを睨み上げながら言ってやったけど、お母さんは逆ににんまりと笑う。
そのまま、あたしの腕を引いて無理やり体を起こさせられ、ベッドから引きずり下ろされた。