青空にさよなら
それから、僕は彼女のお母さんの真似をして、少しでも心の距離を近くしたいという一心で蒼唯ちゃんのことを“あおちゃん”と呼ぶようになった。
お気に入りのあだ名らしく、僕に呼ばれると、嬉しそうにはにかみながら振り返ってくれる。
その姿は、何度見ても飽きないくらいに大好きだった。
会えば会うほど、蒼唯ちゃんへの気持ちは大きくなっていくばかり。
だから、一刻も早く彼女に恩返しをして、恥じない自分になろうと、やっと変わり始めた頃。
神様は、残酷だった。
「ソラー!今助けるから待ってろ!」
降りしきる雨の中、僕は川の真ん中で助けを求めるソラのもとへ向かう。
何日も雨が続いて、しばらくあおちゃんと会ってなかった僕は、気付けば寂しさのあまりいつものこの川へと足を運んでいた。もしかしたら、あおちゃんも来てくれるかも、なんて思って。
そしたら、ソラが雨で増水した川に流されてしまっていたんだ。
慌てて飛び込み、ソラのもとへと泳いで向かう。
なんとかソラを抱き抱えたのはいいけど、川の勢いが強すぎて、岸へと戻ることができない。
前へ進もうとしても、濁流が押し寄せてきてそれを阻む。
僕たちの大事な場所が、まるで牙を剥いたみたいに恐ろしく感じた。