青空にさよなら
ピンク色のハイヒールが玄関に揃えられているのを見て、あたしは真っ先に先生がいるであろうリビングへと走った。
「澤田先生っ!」
「あら、今日はずいぶんと元気ね」
微笑む澤田先生の手にはまたプリントの束。
「それ……」
「これはね、今日やった英語の小テストと答えと……それからノートのコピーね」
ノートのコピーは、これからは毎日持ってくるから安心して、と澤田先生が微笑む。
先生にもらった今日の分のコピーは、昨日もらったものと同じ字のノートのものだった。
「あの、このコピーって……」
「ああ、須藤さんのノートよ」
やっぱり、美空だったんだ……。
メッセージを思い出して、あれだけ泣いたというのにまたうるっときてしまう。
「須藤さんね、先生が川原さんの為にノートのコピーをとらせてほしいってみんなに頼んでいる時、自分から『私ので良かったら使ってください』って言ってくれてね」
暗くて控えめな性格の美空が、自分から……?
「今日もね、『これからは毎日届けてあげてください』って言って、自分でコピーをとって私に持ってきたの。びっくりしたけど嬉しかったわ」
あたしの為に、あいつらの目を盗んで自分のノートのコピーをとる美空の姿を想像すると、それだけで胸がいっぱいになった。