青空にさよなら
「ただいまー!」
碧の言葉に少し違和感を覚えつつも、そのあとはいつも通りの碧に戻っていたので、あたしは特に気にすることなく他愛もない話をして、時間になると家に帰った。
玄関にいつものハイヒールはない。
ということは、今日は珍しく澤田先生はまだ来ていないらしい。
あたしは、お母さんにもまた学校に行き始めることを話そうと思い、キッチンへ向かった。
「あのさ、お母さん」
「ん?ああ、おかえり。蒼唯」
夕食の準備をしているお母さんに、あたしも「ただいま」と返す。
「あのね、お母さん。あたし、学校行くことにしたから」
さらりと単刀直入に言うと、お母さんは野菜を切る手を突然止めた。
「あらま、どしたの急に」
「うん。そろそろ行ってもいいかなって思って」
碧とは違って、お母さんはだいぶ驚いているらしい。しきりに瞬きを繰り返しながらあたしを見つめる。
でもそれも少しの間だけで、あたしの決意を褒めてくれるかのように背中をぱしっと叩いてくれた。
「よく自分で決心できたね。えらい!頑張りな!」
「ちょっ……痛いよ、お母さん」
背中を叩かれる力がちょっと強いけど、それほどお母さんは、あたしが自分で動き出すと決めたことが相当嬉しいみたい。
あたしは、お母さんの力強い応援をしっかりと背中で受け止めた。