青空にさよなら
あたしは学校へ行く前に、いつも橋へとやって来た。
これからいってきます、と碧に伝えていきたかった。
昨日会った時に碧に何も言ってないから、こんな朝早くから居るわけないと思うんだけど、もし居るなら……。
「碧ー!」
名前を呼びながら辺りを探してみるけど、返事はない。
橋にも土手のほうにも誰もいなかった。
「……やっぱり、さすがにいないよね……」
学校に行く前に、一目でいいから碧に会いたかった。碧に会って、声が聞きたかったんだけど、仕方ない。
昨日言っておけばよかったなと後悔しながら来た道を戻ろうとしたその時だった。
「呼びましたか?蒼唯さん」
耳慣れた穏やかな声が後ろから聞こえて、慌てて振り返る。
「み、碧っ!?」
「おはよう、蒼唯」
さっきまで誰もいなかったはずなのに、いつもと変わらない笑顔を浮かべた碧がそこに立っていた。
「な、何でっ……!?」
せっかく来てくれたというのに、碧が突然現れたことにあたしはただただ驚くばかり。
「何でって、蒼唯が俺のこと呼んだんでしょ」
案の定碧は少し不満げにぷくっと頬を膨らませる。
「ごめん、ちょっとびっくりしちゃって……」
素直に謝ると、碧はあのたれた目もとをさらに下げて優しく微笑んだ。