青空にさよなら
頬に手を添え、小首を傾げながら美空を見やる清水さん。
あたしの頭の中に、美空にトイレでバケツの水をかけられた時のことがフラッシュバックする。
また美空を利用して、あたしに嫌がらせをするつもりなのか。
もうたいして何とも思わないし平気なんだけど、美空を利用するということが卑怯すぎて許せない。
「じゃあ、とりあえず、明日川原蒼唯が学校来る前に、上履きをトイレの便器の中にでも隠しておいて」
にこりと逆に怖い笑顔を浮かべて、清水さんが美空にそんな命令を下した。
まあ、美空は従うだろう。こいつらに逆らえるわけがない。
明日被害に遭わないように、今日は上履きを家に持って帰っておこうかな。
そんなことを考えていたあたしだったけど、次に耳に届いた声に思わず目を見開いた。
「……嫌です……」
かすかだけど、確かに美空の口から、そう言ったのがその場にいた全員に聞こえた。
「は?なんか言った?」
聞き間違いではとでも言いたげな様子で、清水さんが美空に問う。
美空は、もう一度ハッキリと言った。
「わ、私っ、川原さんにはもう何もしません……。清水さんになんと言われても……」
美空……!