僕らはただ、恋がしたい
所属する企画開発部のフロアにエレベーターが到着する。
俺は真っ先に自販機コーナーへと向かいアイスコーヒーのボタンを押した。
体は冷え切っているがそんなことはどうでもいい。
とりあえず、苦いコーヒーをグッと飲みたかった。
ピピッと音とともに受け取り口のカバーを開け取り出した紙コップをすぐさま口元へと運ぶ。
ゴクゴクと喉をならしながら一気に飲み干し小さく息を吐く。
親指で口の端を拭いながらゴミ箱に紙コップを投げ入れたその時。
「いい飲みっぷりですね」
妙に明るい声が聞こえてきた。
顔を向けると今時の大学生のようななりをした男がニコニコと俺を見つめていた。
「…どなたでしょうか」
もしかしたら年上かもしれない、もしかしたら取引先の人かもしれない、とそう瞬時に判断しとりあえず敬語を使ってはみたがどうやら表情がアウトだったみたいだ。