僕らはただ、恋がしたい


景山桐斗、企画開発部、イラストレーター。



「今日から進行する新作の制作に参加します」

「へぇ…今学生か?」

「はい。あと1ヶ月で卒業ですけどね」



景山はニカッと人懐っこそうな笑顔を浮かべた。

正直、苦手なタイプだ。



「さっき藤田(フジタ)さんと話してたんすけど、ちょうど陽季さんがここに歩いていくのが見えたんです。あいつもチームの1人だからあいさつしとけ、って」

「藤田さんが…」


制作チームのリーダーがそういうならまず間違いないだろう。

おそらく景山は早期入社組だ。


一般的な会社ならともかく、うちのようにサービスや芸術方面の会社なら珍しいどころか担当部署によっては当たり前のことだ。



「俺、結構嬉しいんですよね。早期入社って最近多いみたいですけど、まさかOMIにとって初ジャンルの作品制作に参加できるなんて思ってもみなかったです」

「…実力勝負の世界だからな、この業界は」



自販機コーナーを出て企画開発部のオフィスに向かう。



その間、数メートルしかない距離が異様に長く感じるほど景山はぺちゃくちゃと喋り続けた。


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