僕らはただ、恋がしたい


オフィスの扉を開くとすぐ様声をかけられた。


「陽季!おはようさん」

「おはようございます、藤田さん」

「出勤早々悪いけど、景山に社内案内してこい」

「え?俺がですか?でも朝一で会議するって…」

「今日は1日だらだらと会議する予定だし、どうせ午前中は女の子達の話聞くだけだ。いてもいなくても同じだろ?俺たち男の子はほとんど用なしなんだから」

「なら、別に俺じゃなくても…」

「じゃあお前、恋バナとかできるか?」

「え、あ、いや…」

「無理だろ?恥ずかしいだろ?そういう恥ずかしいことは俺が引き受けてやるから、お前は楽な方にしとけ」



小声でそう言う藤田さんは少し嬉しそうに見えた。

どっちかというと、新人の社内案内より女の子と話す方がいいんだろう。

そしておそらくチームの中で恋愛話が苦手そうな俺を選んだんだ。


「…分かりました、行ってきます」

「よし!もし戻ってくるまでに話が進みそうだったら呼び戻すから、それまで景山の相手してやれ。なんなら呼ぶまで5階行っててもいいぞ」

「じゃあそうします」


かばんをロッカーに入れ、上着はいつものようにクローゼットスペースにかけた。


景山にもそうするよう視線で合図を送る。



「秘書部は必ず行けよ。あそこはうちの顔だからな」

「秘書部!俺秘書部超行きたいっす!!」

異常な反応を見せた景山に藤田さんは自慢げにしてみせる。


「いいぞ~秘書部。美人揃いだ」

「まじっすか!すげえ楽しみ!!俺、好みの人いるんですよ!!好みっつーか、もう好きっていうか。今日は受付にいましたね」

…っ。


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