僕らはただ、恋がしたい
「なんとなくは知ってるだろうし、入社説明会でも詳しく聞くだろうけど…一応ざっと説明するぞ」
エレベーターに乗り込み2階のボタンを押す。
「うちは、株式会社OMI。正式名称はアルファベット読みでOMI(オーエムアイ)だけど、一般的にはローマ字表記のOMI(オーミ)って呼ばれることが多いな。別にどっちでもいいんだけど」
「創設者が逢巳さんだからなんですよね?」
「ああ、社長のひいじいさんがそうだ。近所の子と遊ぶための玩具を作り出したのが始まりで、創業したのはだいぶ年食ってからだそうだから1代目の期間はかなり短い。約5年だ」
「みじけっ!」
「今は主に家庭用ゲームソフトや携帯端末で配信するアプリの開発。ターゲットは基本男性で、アクション要素の強い作品が多いな。けど、今度明確に女性ターゲットの作品を企画していて…まあ、それがお前の初仕事なわけだけど」
「乙女ゲームってやつですよね?俺やったことないんですよ。陽季さんあります?」
「ねぇよ」
チーンと音とともにエレベーターの扉が開く。
「ここはお客様用のエントランスだ。学生の社会見学とかもよくあるから結構広い。秘書部以外の社員は滅多に来ることないからそのつもりで見とけ。特に俺ら開発側の社員は半立ち入り禁止場所だからな」
「半立ち入り禁止?なんすかそれ」
「…開発側の社員はいろいろと夢を奪うんだよ」
「夢………?」
景山は首をかしげる。
「2階3階は見学フロアだ。今までのOMIの歴史とか作品とかがあるけど…まあここも俺らは半立ち入り禁止フロアだし、見学時間が終わると2階と3階は消灯するから入社説明会でじっくり見とけ」
「わ、分かりました…」