僕らはただ、恋がしたい


「他のフロアのことはこのパンフレットに詳しく書いてある」


受付嬢に軽くあいさつをしながら受付横にあるお客様用のパンフレットを手に取る。



「2階と3階以外は社員証を持ってる人間なら基本どこでもいける。社員証は…まだもらってないのか?」

「まだできてないみたいです。来週にはできるからとりあえず名刺で対応しとけって。名刺見せればフードコートは利用できるからそこ以外は誰か社員に連れてってもらえって言われました」

「そうか…秘書部ならともかく、社員証は名刺より大切なものだから絶対無くすなよ。作るのに時間かかる上に高いんだこれ。仏の顔も三度…2枚目までは会社が負担してくれるけど3枚目は自費だからな」

「…ちなみに、おいくらなんです?」



顔をひきつらせる景山に耳元で金額を伝えた。


「なっ!!!……うぇ…ま、まじすか……」

「これ1枚で社内どこでもいけるからな。もしもの時のための保険も兼ねてだから………無くさなければいいんだぞ」

「が、頑張ります…」

「んじゃ、次行くぞ。めんどくさいから上から順に…」


そう言い、エレベーターの方へ足を向けた瞬間、景山が興奮したように声をあげた。




「秘書部!俺秘書部行きたいです!!」

「…秘書部は後でいいだろ」

「えーなんでですか?」

「なんでって……その…楽しいことは後回しってやつだよ」

「あ、俺好物は先に食べちゃう方なんで問題ないです。ね?秘書部行きましょ」



景山はパンフレットで確認し、秘書部のフロアのボタンを押した。


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