僕らはただ、恋がしたい
「あの!」
俺を見つめていた瞳が声の方へ動いた。
俺の前に立つ茅沙の横にいつのまにか景山が姿勢を正して立っている。
「俺、景山桐斗って言います。企画開発部に早期入社した新人です」
嬉しそうに自己紹介する景山をぽかんと見上げる茅沙。
そんな茅沙を愛おしそうに見つめる景山を見て心臓がドクンと波打った。
「覚えてませんか?入社面接の時、俺が落としたボールペンを拾ってくれたこと」
「ボールペン………あ、あの時の?」
「思い出してくれました?…俺、OMIの作品が好きだからここの試験受けました。でも、あの日からはもうずっと…あなたに会いたくて頑張ってきたんです」
それは、誰がどう聞いても告白の言葉だった。
「名前、教えてください」
ピクッと肩を震わせた茅沙が、まるで俺に許可を得るような視線を向けてくる。
…俺はすぐに目をそらした。
茅沙がどんな反応をみせたのかは分からなかったけど、少し間をおいて「…笈川、茅沙です」と告げたのが聞こえた。
また、心臓が波打った。