僕らはただ、恋がしたい


「さっき秘書部であったじゃないですか。笈川茅沙さんですよ!」

「ああ…笈川さん……」



思い出したような演技をするため必死に苦笑いを浮かべる。


「茅沙さんに彼氏いるとか知ってます?気になる人とかいたりするんですかね?」


「さ、さあ…秘書部とはあまり関わりがないからな…」


嘘だ。


開発メインの人間ならともかく俺と景山が所属している企画開発部は打ち合わせやイベントなどで頻繁に広報の人間と関わることになる。



「そーなんすか?じゃあ本気でアタックしないとダメってことですね」


意気込む景山を横目に残っていたコーヒーを勢いよく飲み干した。





俺と茅沙の関係は会社の人間にはほぼ知れ渡っている。

景山にもすぐバレることなのになぜこんな態度をとってしまったのか。



…答えは決まってる。


『茅沙は俺の女だから、手を出すな』


俺には、そう言う勇気もなければ資格もない。




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