僕らはただ、恋がしたい
しばらくゲームコーナーで過ごした俺と景山は定時を知らせるアナウンスで一旦部に戻った。
特にやることもなさそうなので今日は定時退社ということで帰り支度を始める。
まさか定時で帰れるとは思ってなかったのか嬉しそうにする景山と違い俺は気が滅入りそうだ。
デートはもう何度もしているが毎回胃が痛いし精神を削られるし、その上今夜は結婚式で着るドレスを選ばなくてはいけないらしいし。
「陽季さん、陽季さん!今夜暇っすか?新歓だと思って飲みに連れてってくださいよ!!」
今日初めてあった割に馴れ馴れしいこの後輩と飲む方がマシだと思えてくるし…。
満面の笑みで俺を見やる景山に正直すがりたかったが、母さんに怒鳴られるぐらいなら胃痛をとる。
それに…茅沙とのデートは決して嫌なわけじゃない。
「予定があるから無理だ。じゃあな」
オフィスを出てエレベーターホールへ向かう俺を景山が慌てて追いかけてくる。
「予定?あ、もしかして彼女さんとデートですか?」
「関係ないだろ」
「やっぱそうなんすね?俺も行っていいですか?」
「は?」
バカなのかこいつは、と心の中でツッコむ。
どこの世界に入社初日に上司のデートに同行する新人がいるだろうか。
「あ、もちろん飯食ったらすぐ帰りますから。その後のことまで邪魔したりしませんよ?」
その上いらん勘ぐりまで働かせている。