僕らはただ、恋がしたい
「分かりました、一緒に飯は諦めます。せめて彼女さんがどんな人かだけでも確認させてください!」
「だから、デートじゃないって言ってるだろ。くどいぞ」
「いーや、絶対デートだ。いーじゃないっすか顔見たら帰りますから」
いくら断っても景山はしつこく、このままだと会社を出てもついてきそうだ。
それは非常に困る。
景山に、彼が好意をよせている笈川茅沙の交際相手が俺だとバレてしまう。
いずれは確実にバレるのだからいっそ今言ってしまった方がいいことだと思えど、やっぱり勇気がでない。
景山に俺と茅沙のことを話すのは噂好きの社員にまかせて―――。
「…っ」
反射的に足が止まった。
1階についたエレベーターから降りた瞬間、エントランスホールの休憩スペースでイスに座っている人影が目に入る。
トクンと心臓が波打つ。