僕らはただ、恋がしたい


「茅沙さん!」



景山が足取り軽く茅沙に駆け寄る。




「あ、えっと、確か…景山くん?」

「そうです!嬉しいな、もう名前覚えてくれたんすね」


景山にフッと笑みを向けた茅沙は少し離れた場所で足を止めていた俺に気付き焦ったような表情を浮かべる。



「ここで何してたんですか?帰らないんすか?」

「え?あ…人を、待っていて…」

「人?……まさか彼氏、とか?」

「あ…」



言葉を詰まらせた茅沙は困ったように俺を見つめる。



俺は目をそらし、「お疲れさまです」と声をかけ2人の横を通り過ぎた。


逃げたかった。

茅沙の視線から。






「え、ちょっと陽季さん待ってくださいよ。彼女さんに会わせてくれる約束は?」

「え?」



空気を読まない景山の発言に俺は勢いよく振り返った。


ふくれる景山の横で茅沙が困惑の表情を浮かべている。



景山は何もおかしいことを言っていない。

何もおかしくないんだ、景山にとっては。




ただただ俺にとって最悪のタイミングだっただけで…。


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