僕らはただ、恋がしたい
「…ん?お?あー…」
俺に気付き振り返った男はぼさぼさの髪をかきながら寝ぼけた様子で近付いてきた。
「えっと…あ、陽依(ハルエ)さんの息子?」
「そうですが…」
「へー…全然似てねーのなー」
特に興味もなさそうにそう言うと、あくび混じりに廊下の突き当たりにある部屋へ入っていった。
そこは、うちの会社の社長であり、俺の母親でもある逢巳(オウミ)陽依の部屋だ。
また男連れ込んだのか…。
適度に無関心な親子関係とはいえ、実の母親が自分と同じくらいの年齢の男と毎晩のように戯れているというのはやはりいい気分ではない。
しかめっ面でドアを閉め、洗面室へと足を向ける。
さっき見た夢を忘れようといつもより多く顔を濡らしていると唐突に背後から声がした。