僕らはただ、恋がしたい
「あんたは今日茅沙(チサ)ちゃんとデートでしょ!」
「ってぇ…は?」
蹴られた痛みに気をとられワンテンポ遅れて首をかしげる。
「そんな約束してない」
「あんたが誘うのよ!今日!会社で!!」
「なんで…」
気怠そうにする俺に舌打ちをすると腕を組んで睨みをきかせてきた。
「陽季(ハルキ)くん?先週の笈川(オイカワ)家での集会はなんのために開かれたんだっけ?」
目をそらし無言の俺に再び舌打ちをしてくる。
「陽季!」
「…結婚式の打ち合わせ」
「誰と誰の」
「俺と………茅沙」
それは、もっとも触れられたくない話であり、もっとも真剣に向き合わなければならない話。
視線を向けた先で母さんは呆れた表情を浮かべていて、俺は何も言わずまたすぐに目をそらした。