樹海を泳ぐイルカ
第9章 それはとても柔らかな
ふわりとした暖かな温度が僕を包む。
透子が僕を抱きしめていた。
「大丈夫…大丈夫だよ」
静かにこぼれる彼女の言葉が傷口に沁みた。
透子の腕の中で、意識が朦朧とする。
透子、君が魔物なら
世界すべてが嘘なんだ。
たったひとつ、真実は君だけだよ。
透子が叫んだ、彼の名前。
守れなかった、自分への嫌悪感。
抱きしめてくれた、透子の温度。
それでも廻る、僕の世界。