樹海を泳ぐイルカ
入学して、一ヶ月。

友達もできて中学の頃の希望通り僕は憧れた世界のなかにいた。

教室で友達とする何気ない話題で笑いあう時間の心地よさを知った。

教師の黒板にかいていく新しい知識に胸がワクワクした。

僕は一度捨てたものを、少しずつ取り戻せているように感じた。

輝きが自分のなかに戻ってきているのを確かに感じたから。



そして学力診断テストが行われた。


学力だけが全ての生徒たちが集うこの学校でテストというイベントはプライドをかけた真剣勝負。



僕は一位を勝ち取ろうと必死になった。

エリートを生きてきた父さんと同じ道から外れないように。


母さんの泣き叫ぶ背中が僕を突き動かした。



頬がこけるほどの努力のかいがあって、わずか三点差で僕は学年一位を勝ち取ることができた。



二位は中谷。




そう、それが悲劇の始まり。
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