樹海を泳ぐイルカ
「窒息しないのかな」



真っ赤な魚が泳ぐ小さな水槽を眺めながら透子が呟いた。


「………」

「ちっそく」


僕が黙っていると、透子が一文字ずつ丁寧に発音した。


「しないよ。エラ呼吸だから」

「人間もエラ呼吸を身につける時代がくるんじゃない?」



「……そうかもな」


だとしたら学校も家庭もなくなって海でただよう日もくるのかな?





「……でも…」


透子が赤い魚を行くあとを指でたどりながら呟く。







「必要なのはエラなんかじゃないよ」




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