樹海を泳ぐイルカ
「おい聞いてんのかよ!!!!」


中谷が僕の胸ぐらをつかみ椅子から立ち上がらせる。
思い出から現実に引き戻された。

いや、思い出なんかじゃない。

彼らのゲームはまだ始まったばかりなのだろう。

「すかしてないで、何とか言えよ!!!」

僕の倍ほどある中谷の身体から繰り出される右ストレートは見事腹に命中し僕は床に倒れ込んだ。

女子の金切り声に似た悲鳴が耳をすり抜ける。

腹の痛みにのたうちまわる僕をクラス中が見下ろす。


彼らのプライドを傷つけた僕が堕落していく瞬間を目に焼き付けるように。



ぼやけていく視界のなかで激痛をこらえ顔をゆがませる僕を取り囲み、魔物のように笑いあうクラスメイトを見上げていた。

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