樹海を泳ぐイルカ
「ありがとう……彼方」
僕は君に出会ってよかった。
透子、君は間違いなんかじゃないよ。
「大丈夫だ。僕らはイルカだからずっと繋がっているよ」
「……うんっ」
「だから寂しくなることも怖くなることもないんだ。声を届けるから…」
「……うんっ…」
透子の頷く声が震えている。
僕の肩もかすかに震える。
「さぁイルカショーを見に行こうよ!」
僕は笑顔でたちあがり、透子に手を差し伸べる。
潤んだ透子の瞳が、華が咲いたような笑顔になり僕の手に白く柔らかい透子の手が添えられた。
僕らは握りしめたお互いの温度を確かめた。
暖かで、痛みを持った温度。
これが最後だ。