樹海を泳ぐイルカ
次々とパフォーマンスを完璧にこなしていく。

ピーと綺麗な笛の音が響くとイルカたちは一斉に空へ舞い上がった。

会場が拍手と歓声に包まれる。



ひとつ、またひとつと終わっていく。



大きくなる拍手と比例するように僕の心には焦げ付くような胸の痛み、焦燥感がつのっていく。






最後なんだ──……






イルカが空から水中に帰ってきた瞬間の水しぶきが、キラキラと瞬いているのを目を細めながらぼんやり眺めた。



「───……ッ」




大きな歓声のなかで、微かな嗚咽が聞こえる。


ふと横をみると、透子の瞳からは宝石のような涙が次々とこぼれていた。


「わああああああ!!!!」

歓声と拍手に埋もれた泣き声は僕にしか聞こえていない。


僕は透子の手を強く握り返した。


「───ふっぁ…」



透子の泣き声は少しだけ大きくなったけれど、それもまた喚起の声にかき消されてしまう。



イルカが太陽を掴むかのように空へ昇っていくのを僕はまっすぐにみつめた。


こみ上げてくる何かをこらえながら。


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