樹海を泳ぐイルカ
第11章 ぬくもり
さっきまで喚起に満ちていた会場がものの数分で静寂になった。
それはどこか虚しく、寂しい気持ちにさせる。
残っていた一組の家族が席を立ち、ついに会場に残ったのは僕ら二人だけになった。
「………終わったね」
「………終わったな」
「ずっと楽しみにしてたの。彼方があたしの夢を叶えてくれたわ」
「楽しかった?」
「すごく。絶対に忘れない。彼方も…どうか忘れないで……」
「……忘れないよ」
そして、僕たちの時間は終わった。