樹海を泳ぐイルカ
第1章 溺れた魚
目覚ましのけたたましい音が部屋中に鳴り響いた。
この音は毎日途切れることなく僕の残酷な1日の始まりを知らせる。
同時に胃が目覚ましにも負けないくらいに強く悲鳴をあげる。
まるでプロレスラーに胃を鷲掴みにされているかのように。
いつかリンゴみたいに片手でグシャっと潰されてしまうんじゃないか、と思う。
そのことを期待している僕がいることも嘘ではない。
いっそ潰されてしまったのなら毎朝この痛みを感じなくてすむから。
軟弱な願いだ。