樹海を泳ぐイルカ


脳内を繰り返しめぐるニュースは僕を導くように走らせる。

痛む身体を振り切るように足だけを進ませた。

僕は無意識に今まで一度も来たこともない樹海のような場所に足を踏み入れた。

きっと、誰も近寄りたがらないだろう樹海の木々の隙間をすり抜けるようにずんずん中に進む。

そこは何の音もしない静かな場所で、此処でなら森の精霊の存在も信じられる。

青々とおおい茂った木々は、きっと僕がうまれるずっと前から此処で静かに息をしているのだろう。

僕はなぜか、いつの間にかさっきまでの現実にさようならをすませて、もうここがすでに全てを振り切った者だけが入ることを許された新たな世界のような気がしていた。


奥に進んでいくと、中には取り壊し作業がされていないのが不思議なくらいの廃墟となったビルがあった。


無意識に僕は入り口のなかになんのためらいもなく入った。


森の精霊に導かれたのだろうか?



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