樹海を泳ぐイルカ
手すりから身を乗り出して下を見下ろし、僕はゴクリと唾を飲んだ。
あまりの高さに視界がゆらめく。
「ちょっと、此処で死なないでくれる?」
その声に驚いた僕は慌てて手すりから身をおろした。
振り返ると、ひとりの女の人が僕を面倒くさそうに睨んでいた。
彼女の黒く長い綺麗な髪が風に誘われてそよぐ。
日焼けを知らないであろう綺麗な肌に華奢な体つき。
白のブラウスに白のロングスカートの彼女は、僕が今まで見てきた女性のなかで一番美しかった。
何より強く真っ直ぐな瞳が印象的で、そのなかに捕らえられた僕は身動きができなくなった。