樹海を泳ぐイルカ
「そんなとこで突っ立ってないで、こっちおいでよ」
僕は言われたとおり、彼女の隣に腰をおろした。
肩がぶつかりそうな距離からほんのり香る甘い匂いに心臓が高鳴る。
「君、名前は?」
「世良 彼方」
「あたし、透子。雨宮透子」
雨宮透子……それは繊細で真っ白な彼女にピッタリの名前だと思った。
「その制服、東宮高校じゃない?」
「あぁ……うん」
「へぇ、君って結構頭いいんだ」
そう言って彼女は少し悪戯っぽい笑顔を浮かべた。
「退屈な奴らの集まりだよ」
「じゃあ彼方も退屈してるんだね」
彼女の言葉と、いきなりの呼び捨てに僕は苦笑した。