樹海を泳ぐイルカ
「あっ!!飛行機雲!!」
透子は立ち上がり柵から身を乗り出すようにして空を仰いだ。
青空に、白い線がまっすぐに伸びている。
その延長線の行き先を僕は知らないが、いつか消えるその線を彼女と見ていることがくすぐったかった。
ふいに彼女は振り返る。
瞬間、僕はドキリとした。
「死なないの?」
「……どうかな。君のせいで死にぞこないだよ」
「いいじゃない。こうやって飛行機雲がみれたんだし」
僕は肯定も否定もせずに、その真っ直ぐな白線をみつめた。
彼女もその真っ直ぐな瞳に、青い空をうつしていた。