樹海を泳ぐイルカ
電気もつけず制服も着替えず、僕はベッドに仰向けになり天井をみつめた。
頭のなかは、雨宮 透子でいっぱいだった。
彼女はいったい、どんな性格で
どんな環境で育ち
どんなことを経験してきたのだろうか?
僕はまだ彼女のことを何も知らない。
ただひとつ、わかったことは
彼女は樹海を掌におさめていること。
“不思議”という言葉では語れない。
きっと今存在している途方にくれる数の言葉たちのどれを使っても、彼女に値するものなどないのだ。
そんなことを考えていると僕はいつのまにか深い眠りについていた。