樹海を泳ぐイルカ
教室にはいるのは教師と同時になる寸前の時間を選んだ。
受けないですむ攻撃はできるだけかわしたい。
そんな僕を中谷たちが面白くなさそうに睨みつけているのがわかった。
教室内では息ができない。
普通に呼吸して、奴らと同じ空気を全身に行き渡すのを僕の細胞が拒否したからだ。
僕はなるべく息をとめて、限界にたっしたときわずかな空気が鼻をとおっただけで酷く咳き込んだ。
チョークの音が虚しく響く。
一文字も書き落とすまいと板書しているクラスメイト。
火傷が酷く痛んだ。
僕は握っていたシャーペンを手から放り出し、窓からみえる青空を見つめた。
飛行機雲は見えなかったけど、無性に透子に会いたくなった。