樹海を泳ぐイルカ
「彼方はイルカだね」
恐る恐るみた彼女はさっきと変わらない、いやさっきよりも更に柔らかい笑顔で僕のとなりにいた。
ドロドロの感情が一気に箱の中に戻っていく。
「………なにそれ?」
「知ってる?イルカってね、他の生物には聞こえない声で会話しているの」
そうやって話す透子は懐かしげに遠くを見つめていた。
「……うん。昔、何かで読んだことある」
「彼方はイルカ。他の人には聞こえない声があるの。あたしもイルカだから、その声が聞こえた」