樹海を泳ぐイルカ
「そもそもイルカが超音波を使うようになったのは、水中で生活しているかららしい。海のなかじゃ濁りがあったりして視覚が役にたたなくなるからね」
「光より音を頼りにしてるんだ…」
透子が図鑑のページをめくりながらぼんやり呟く。
聞いているのか、聞いていないのか……
構わず僕は話を続けた。
「その超音波で、イルカは物体を確認したり自分自身を主張したりするんだ」
「他の生物には聞こえない声で存在証明をしているのね」
そう。その叫びが聞こえるのは、同じ種族のイルカだけ。
イルカたちがどんなに叫んだって人間には聞こえてこないんだ。