樹海を泳ぐイルカ
「さ…さぁ…どうだろう…でもオーストラリアから日本近海まで届くらしいよ……」

透子の瞳の強さにしどろもどろになる。


「……そう」

自分から訊いてきたくせに透子は僕の答えに興味なさそうにそっぽを向いてしまった。

気まぐれというか、なんというか……

あたりには妙な緊張感が残った。

蝉の鳴き声だけが騒がしく響く。

僕は透子の言葉が気になっていた。

気になって気になって気になってしかたなかった。

だけど訊いてしまえば透子を傷つけてしまいそうで、詮索しているみたいで、嫌だった。

(アメリカになにがあるの?)

質問はもう喉のあたりまできているのに。
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