樹海を泳ぐイルカ
「お兄ちゃん……」
「え?」
「アメリカに、お兄ちゃんがいるの」
僕の心を読んだかのような言葉にすごく動揺した。
「そ…そうなんだ」
「そう。そうなんです」
「ねぇ彼方はさ、すきな人いる?」
「うえ゛ぇえぇあぁあい!??!」
「フフ。君ってそういうの疎そうだもんね」
……図星だ。
僕はそういうことに関してとても鈍かった。
興味がないわけじゃない。
16年間生きてて、可愛いなと思う子に出会わなかったわけでもない。
クラスに1人は可愛いなと思える子はいた。
だけど、それまでだ。
それ以上、深くは想わないようにしていた。
なんせ、僕はクラスにひとりぼっちの“宇宙人”だっただから。
お姫様が宇宙人を好きになる話なんて、おとぎ話にでさえない。