樹海を泳ぐイルカ
透子は優しい目で僕をみている。
それがなんだか馬鹿にされたみたいで、少しムッとした。
「………なんだよ…」
「ねぇ、彼方…」
「……何?」
「あたしね…………お兄ちゃんがすきよ」
きっとその言葉が、僕らの物語が始まった合図だった。
いや、もう出会ったときから始まっていたのかもしれない。
むしろ生まれた瞬間から……
透子、まだ出会わぬ君と駆け抜ける今のために
僕は樹海に導かれたんだと思う。
少なくとも、透子のその言葉がこれから歩む僕らの未来を
ぼんやりと示していた。