樹海を泳ぐイルカ


残酷だ。


残酷だよ。



僕の恋の始まり方はあまりにも残酷だった。


そして彼女の恋もきっと同じように残酷で…


「一生誰にもこの気持ちを口にしないと思ってた。いっそ捨ててしまえば楽になるって、他の人をすきになってみせるって思った…だけど駄目だった……」

「伝えたの……?気持ちを…」

透子が静かに頷いた。

「気持ちがね、溢れて…とめられなくなって…どうすることもできなくなって、正直な気持ちを伝えたわ。兄としてじゃなくて1人の男性としてすきです…って」

「それでお兄さんは何て?」

「初めは戸惑ってたけど…だんだん受け入れてくれるようになって…」










「愛してくれた。本当に大切にしてくれた。“透子の喜びも悲しみも一緒に背負う。俺が透子の明日を幸せにする”」






アイシテル。

オレ ガ トウコ ノ アシタ ヲ シアワセ ニ スル。




透子が遠くにみえた。

ずっとずっと遠く。


こんなにも近くにいるのに。




< 75 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop