樹海を泳ぐイルカ
残酷だ。
残酷だよ。
僕の恋の始まり方はあまりにも残酷だった。
そして彼女の恋もきっと同じように残酷で…
「一生誰にもこの気持ちを口にしないと思ってた。いっそ捨ててしまえば楽になるって、他の人をすきになってみせるって思った…だけど駄目だった……」
「伝えたの……?気持ちを…」
透子が静かに頷いた。
「気持ちがね、溢れて…とめられなくなって…どうすることもできなくなって、正直な気持ちを伝えたわ。兄としてじゃなくて1人の男性としてすきです…って」
「それでお兄さんは何て?」
「初めは戸惑ってたけど…だんだん受け入れてくれるようになって…」
「愛してくれた。本当に大切にしてくれた。“透子の喜びも悲しみも一緒に背負う。俺が透子の明日を幸せにする”」
アイシテル。
オレ ガ トウコ ノ アシタ ヲ シアワセ ニ スル。
透子が遠くにみえた。
ずっとずっと遠く。
こんなにも近くにいるのに。