樹海を泳ぐイルカ
「前に彼方にイルカの声のことを教えたでしょ?」
「あ…あぁ…。そうだったね」
「あれね、お兄ちゃんがアメリカに行く日、空港で泣きじゃくるあたしに言ってくれた言葉なの」
透子が優しく微笑んだ。
その瞳はどこか遠くをみていた。
「『透子、イルカには他の動物には聞こえない声があるんだ。遠くまで届く声が。だから俺も透子にアメリカから叫ぶよ。誰にも聞こえない、透子にしか聞こえない声で何度も。愛してるって』」
僕は、苦しくなると同時に
その言葉の暖かさに胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
僕の知らない愛してるを紡いで捧げた、その言葉に。