樹海を泳ぐイルカ
「どう?おいし?」
「おいしいよ。すっごく」
「高校にはもう慣れた?」
「うん慣れたよ。クラスも最高のクラスだし友達もできたんだ」
僕は一言もつまらずにスラスラと、頭のなかで用意された台本を読みあげた。
「フフッ。それはよかったわ。勉強も頑張ってね」
「もちろんだよ。母さんは何も心配しないで」
僕は、笑った。
「ごちそうさま」
席をたち玄関でピカピカに光るローファーを履く。
玄関におかれた全身をうつしだす鏡には、有名私立高校の生徒で思春期にもかかわらず母親とも上手くいっている「世良 彼方」が映っていた。
「いってきまーす」
にこにこ顔で玄関先まで見送りにくる母さんに手を振り僕は家をでた。