樹海を泳ぐイルカ
樹海の夜は、深い。
蝉の声が止んだ静かさは不気味という言葉を思い出す。
透子はそんな夜の樹海でさえも迷うことなく出口へたどり着ける。
樹海をぬけると、ぼんやり光る月が顔をだしていた。
「送っていかなくて平気?」
「気持ちは有り難いけど、あたしそんなヤワな女の子じゃないの」
赤い目をした透子は悪戯っぽく笑って言った。
「じゃあね、彼方」
胸元でヒラヒラと手をふり透子は去っていった。
その後ろ姿は
脆さ故に崩れそうで
強さ故に眩しかった。
打ちのめされても、愛するのは
覚悟の問題?
相性の問題?
それとも……